心不全
心不全とは、何らかの心臓の機能障害が原因で、人が生命を維持するために必要な血液を全身に送り出すことができなくなる状態で、様々な自覚症状が生じる疾患です。近年、社会の高齢化にともない、急速に患者数が増加している疾患でもあります。
心不全の有病率は、加齢とともに増加し、65~74歳は4%、75~84歳は9.7%、85歳以上は17.4%の方が心不全を有していると報告している研究もあり、また入院を要する心不全は75歳以上が半数を占め、特に85歳以上が20%を占めています。
さらに、心疾患は日本人の死亡原因としては悪性腫瘍(癌)に次いで第2位となります。超高齢化をむかえる我が国にとって心不全は決して珍しい疾患ではありません。高齢者に多く、重症になりやすい疾患でもあることから、早期発見、早期介入による重症化を防ぐ取り組みが健康寿命のためには重要になります。
症状
心不全では以下のような症状が見られます。
- 全身のだるさ・疲労感
- 動悸・労作時息切れ・呼吸困難
- 足のむくみ
原因
心不全の原因の多くは、心臓自体に障害が生じた場合です。
主な原因としては以下に上げたものになります。
虚血性心筋症
最も多い原因は、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患です。重症な狭心症や急性に発症する心筋梗塞では、狭心症や心筋梗塞の症状と同時に心不全の症状が出現します。しかしながら、狭心症や心筋梗塞の治療後にしばらく経過してからも心不全症状を発症する場合があります。狭心症や心筋梗塞は心臓カテーテル検査で治療を行いますが、カテーテルの治療ですべてが終了ではありません。その後も適切な内服加療を継続する事で心不全に陥ることを予防します。
弁膜症
心臓は収縮と拡張を繰り返すことで血液を体全体に循環させるポンプの役割を果たします。効率よく血液を循環させるために、心臓の4つの部屋に逆流防止機能である弁がついています。その弁の機能不全が弁膜症です。弁が開かなくなる狭窄症や、弁が閉じなくなって逆流が増える閉鎖不全症が生じると、胸の音を聞いたときに雑音が生じます。初期は雑音聴取されても自覚症状はほとんどありません。ですが、心臓には絶えず負担がかかっており、時間経過とともに少しずつ心機能が低下していきます。
高血圧症
高血圧は自覚症状に乏しい疾患ですが、長年放置することで血管が固くなります(動脈硬化)。血管が固くなることで心臓のポンプ機能はより強く収縮するため負担がかかります。また、心臓自体の柔軟性も失われることで最終的に心臓がへばってしまい心機能がおちて心不全を発症します。
心筋症
心臓は筋肉の塊です。その筋肉事態に病気が生じて心機能が低下する疾患です。心電図以上の精査で心エコーをして初めて判明することが多いです。重症な疾患の可能性が高いので高度医療機関での精査が必要になります。
不整脈
正常ではない脈をすべて不整脈といいます。ですので、重症なものから軽症なものまでさまざまな不整脈が存在します。重症なものはほとんどが致死的なもので速やかに症状が出現するため、緊急治療が必要になります。
一方で、軽症な不整脈は自覚症状に乏しい場合が多いです。健康診断で偶然見つかる場合もあり、放置しがちです。しかし、やはり心臓への負担は着実に積み重なっていき、長期的にみると心機能が低下していきます。軽症不整脈でも様々なものがありますので、一度クリニックで相談されることをおすすめします。
他にも貧血や甲状腺機能、肺疾患なども心臓に負担をかけて心不全をより増悪させる場合があります。心不全が原因で腎臓や肝臓に負担がかかり、多臓器不全におちいる可能性もあり、心臓だけではなく、全身管理が必要になります。
検査
まずは問診と身体診察が重要になります。胸の音や全身のむくみの具合、症状が生じる場面など身体所見や生活習慣などが重要になりますので、詳しくお話を聞かせていただき診断していきます。
お話を聞いた後に症状に応じて、適切な検査をご提案いたします。
心不全の検査には、おもに以下の4つが用いられます。
- 心電図検査
心機能低下の原因をスクリーニングします。 - 胸部レントゲン検査
心臓の大きさや呼吸状態の評価のために行います。 - 心臓超音波(エコー)検査
実際の心臓の器質的な病変や具体的な心機能を評価します。 - 血液検査
BNPで心臓の負担を定量評価します、
甲状腺、心臓以外の臓器の障害の有無を確認します。
治療
心不全が起こってしまうと、命を落としてしまうことも珍しくありません。
そのため日ごろから予防していくことが大切です。症状がなくても継続して加療を行うことで心機能の改善、維持を試みます。適度な運動や栄養バランスの良い食事、十分な睡眠など、生活習慣の改善も重要です。
自覚症状がなくても健康診断で異常や再検査を指摘された場合、クリニックを受診してください。